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直木賞候補作の舞台となった北海道小樽市では、市立小樽文学館の亀井志乃館長(手前右)らファンが集まり受賞を待ち望んだが、次回以降に持ち越しになった=2025年1月15日午後、北海道小樽市、上地兼太郎撮影

 作家の朝倉かすみさん(64)がふるさと、小樽を舞台に描いた小説「よむよむかたる」(文芸春秋)が15日、第172回直木賞の候補作となったが、落選した。ゆかりの人たちは「まだまだ書き続けてほしい」とエールを送った。

 朝倉さんは札幌市在住で、道内を舞台に多くの作品を描いてきた。「よむよむかたる」は、読書サークルに集う高齢者らの人生の機微をユーモラスに書いた3年ぶりの新作で、朝倉さんにとっては2度目の直木賞候補作だった。

 小樽市の繁華街・花園にある「洋食台処(だいどころ) なまらや」では、朝倉さんのファンが夕方から集まり、小樽ビールを飲みつつ選考の行方をスマートフォンで見守った。午後7時過ぎに結果が発表されると「(受賞した)伊与原(新)さんかー」との声が上がった。

 「よむよむかたる」に登場し、朝倉さんの作品の展示コーナーもある市立小樽文学館の亀井志乃館長は「ほかの候補者4人とは作品のテイストが違うので期待したが……」。「小樽は高齢化が進んでいるが、サークル活動が盛んで文化的な素地は厚い。小樽の底力を書いてくれた作品であり、今後も小樽を発信して欲しい」と語った。

 直木賞をはじめ、文学賞批評…

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